相模原にはでいらぼっちの話があちこちにあります。今回は相原(あいはら)です。
昔、この地相原にもたいへんに力持ちの相撲取りがおりました。ある時大山へ行って勝ち抜き相撲をとったそうです。何しろとても強いのでだんだんと勝ち進み、とうとう最後の一番になりました。その最後にあたった相手がでいらぼっちでした。
のっしのっしと出てきた姿を見れば、太い孟宗竹を片手でぐいとしごいて平たくし、それをがっしり腰に締めたまわし姿です。行司の軍配で、両者はさっと仕切って取り組みましたが、相手がでいらぼっちでは、さすがの相原の相撲取りも、手も足も出ません。軽々と抱えあげられてばたばたするだけです。「われをどっちへなげたらええか、こっちの谷か、あっちの山か」相原の方は目をくるくる回して「投げなくてもいい。土俵に体がつけば負けなんだから、そのまま下においてくれ!」必死に頼んで、やっと命が助かったそうです。
でいらぼっちの強さが群を抜いていたという逸話です。
座間美都治
相模原民話伝説集より