むかし、 横山の段丘あたりに七つの不思議なことがあったそうです。 その中の一つにこの「藤橋」の話があります。
八幡様の西北の和田坂の先に、 姥川を渡る小さな橋がありました。
むかし戦いに敗れた落ち武者がここまで逃げて来ましたが、 その時杖にしていた藤が傍らの大木に絡みついて 生い茂り、藤橋といわれるようになったというわけです。 多分落ち武者はそこで果てたのでしょう。 それ以来不思議なことにこの橋は、壊れたことがなかったといわれています。
明治十二年の上溝地誌に「和田義盛かって藤をもて橋として渡りしよりこの名あり、その藤いまなお存し、その藤上に土を置いて土橋とす」と記されています。 これによると,明治十二年にはまだこの藤があり、橋がその藤の上にあって和田義盛の伝説と交じり合っていたたことがわかります。
この他、七不思議には一年すると必ず壊れる「一年橋」。 ひがん沢の池の上には寒中にも竹の子とみょうがが出る「寒竹」と「寒みょうが」。 若木の松の葉を、丹念に一本づつにしてしまったところ、どの葉も一本になってしまった「一羽松」。 竹の節が逆さに生える「さかさ竹」。 冬でも繁っている「寒たで」などがあります。
座間美都治
相模原民話伝説集より