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第7話:びんぼう神


 
 下磯部の田んぼの中に、「もん屋稲荷」とよばれている小さな祠(ほこら)があります。
 ここはむかし「もん屋」という豪家があった跡です。この「もん屋」では、使用人をたくさん使って、米を小荷駄(こにだ)で八王子の方へ出荷しておりました。働く使用人たちの 食事の合図に釣り鐘をついて知らせたほどの豪勢さでした。
 ある年の一月十五日、切り通しの弥五さんという馬子が八王子からの帰り道、御殿峠にさしかかりました。昼間でも追いはぎが出るという淋しいところです。
 弥五さんの前に、どこからともなく乞食坊主があらわれて、疲れたから馬に乗せてくれと言うのです。人のいい弥五さんが、坊さんを馬に乗せてもん屋の所までくると、不思議なことに坊さんはいつの間にかいなくなってしまいました。 さてその翌日は小正月。
もん屋では寒餅をついてついて大賑わいでした。
 そのうち突然どかっという大きな音がして、土間の内井戸の土が崩れ落ちたのです。
賑わいは一瞬止まり、一同は不吉の感に駆られました。
 案の定、それからもん屋ではよくないことが続き、さしもの大身代も跡形もなくつぶれてしまいました。 あの坊さんは貧乏神だったのです。なぜ貧乏神がもん屋に来たのか誰も知りません。


 
小荷駄(こにだ)=馬につけて運ばせる荷物。
座間美都治
相模原民話伝説集より